昨年書いたもの

これだけはどうしてもとっておきたかったので、再び載せます。


HEIMA~故郷 [DVD]

HEIMA~故郷 [DVD]

彼等の故郷であるアイスランドの、その美しさに、かなりの衝撃を受けた。

空間の広大さに、衝撃を受けた。

この映像を観た中では、イタリアやフランス、スペインのような、芸術性の優れた町並みや、建物が登場するわけではない。

過去にヨーロッパ史を学んできた私は、歴史上でも有名である、そのような、人類が生み出した、芸術性の高い美しさにとても惹かれていたが、このDVDを観て、一変した。

映画をあまり観ないせいもあると思うが、今までここまで惹かれる景色を観たことがなかった。

それは、自然だけでなく、人々の穏やかな表情も含まれると言っていい。

ここまで強く、「この地を訪れたい」と思ったのは、初めてだった。

だからこそ、私自身も、あの広大な美しい自然を破壊してダム建設を行うことが決定したというのを観て、悔しくてたまらなかった。



彼等はこのアイスランドという国の美しさを、景色を、空間を、空気を、音で表現している、ただそれだけのことをしているだけなのだろう。

きっとそれほど難しいことをしているつもりはないのだと思う。

だからこそ、一滴の濁りもない音楽が生まれるのだろう。



disc1はドキュメンタリーやメイキング、インタビュー、disc2はライブ映像なのだが、このライブ映像は、一般的に考えれば、少し特殊だ。

これは、2006年の夏に行った、アイスランドフリーツアーの模様を2週間にわたって撮影した映像作品であり、そのライブのほとんどが、アイスランドの小さな町の、草原のようなところであったり、広場のようなところであったり、日本でいう、町の公民館のようなところであったりする。

ライブハウスのようなステージングで行われているライブは、少ないのだ。

あえて、広大な自然の中以外での映像で、記憶に残ったものを挙げると、

港町の教会前での演奏と、廃墟と化したニシン工場での演奏だ。

教会前での演奏では、霧に包まれ、空気の深みが増し、より一層神秘的になり、

ニシン工場での演奏では、自然の中での演奏とは違った「幻想的」な雰囲気が存分に漂う中に、大勢の人か集まり、その演奏に瞬きもせずに視線を向け、耳を傾けていた。とても不思議な光景だった。

とにかくどの風景も、違和感なくSigur Rosが奏でる音楽と共鳴するように、見事にリンクして、美しい。

ほとんどライブの告知をせずに行った場所も多々あったようで、家族連れや、ペットを連れて来ているお客さんも沢山居た。

その、日常的な穏やかさが、とても温かくて、心が許されるようであった。



とても静かで、綺麗にもかかわらず、観ていて凄くドキドキする。

素晴らしい作品。本当に観ることができて良かった。